その不安、いまここで言語化して、出口を見つけよう
「私道持分がない物件って、そもそも売れるの?」——まず、この根っこにある不安に正面から向き合います。結論から言うと、売れます。ただし、通行承諾など「条件づくり」が必要になるケースが多い。だから不安になるのは当然です。この記事では、読者の疑問に会話形式で答えながら、承諾が必要な理由、交渉のリアル、承諾が得られないときの代替策、そして実例ベースの出口戦略までを、手順と判断材料に分けて徹底的に深掘りします。
- この記事を読むメリット:
- 仕組み理解: どこで承諾が必要になり、何が売却価格に影響するのかが見える。
- 交渉の武器: 承諾書の作り方、相手のメリット設計、費用相場と落としどころがわかる。
- 代替ルート: 法的な救済の方向性と、訳あり専門の売却戦略が自分で選べる。
- 実務テンプレ: 使える文言例、チェックリスト、比較表をそのまま活用できる。
ヒント: 「不安の正体」は、ルールが曖昧・相手が不明・費用が不透明の3点に集約されます。この記事は、この3点を「ルール化・見える化・数値化」で一つずつ崩していきます。
通行承諾が必要になる理由と背景
接道義務と私道の性質を、実務目線で整理する
- 接道義務の骨子:
建築基準法では、幅4m以上の道路に2m以上接していないと、原則として建築ができません。
再建築可否は、購入検討者にとって最重要のチェックポイント。再建築不可の可能性があると、担保評価や住宅ローンの利用にも影響が出ます。- ポイント: 「道路」の定義に、建築基準法の道路(公道・位置指定道路・42条2項道路等)が含まれます。私道でも「建築基準法上の道路」に該当すれば接道としてカウントされます。
- 注意: 私道が「建築基準法上の道路」でも、工事や掘削には別途承諾が必要になることが多い。
- 私道の通行と掘削の違い:
- 通行承諾: 歩行・車両の通行を認めてもらう許可。
- 掘削承諾: 上下水道・ガス・光回線などライフラインの敷設・修繕のために道路を掘る許可。
- 売却影響: 通行がOKでも掘削NGだと、住環境の維持・再建築が難しくなるため、売却価格が下がる傾向。
- よくある誤解を正す:
- 誤解1: 「私道でも自由に通れる」→ 所有者の権利が強く、承諾が必要な場合が多数。
- 誤解2: 「承諾は口頭でも大丈夫」→ 売却では金融機関・買主が書面(原本)を求めます。
- 誤解3: 「承諾は一度取れば永続」→ 期間・更新・承継の条件次第。将来のリスク管理が必須。
参考: 建築基準法の道路定義や接道義務の概説(国土交通省のガイドや自治体の建築指導課ページが有用)
- 国土交通省 建築行政情報ポータル: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/
- 東京都 建築基準法の道路解説: https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/
通行承諾書を得るための交渉方法と注意点
交渉は「相手の安心」と「自分の証拠」をセットで進める
- 準備編(交渉前に必ず揃える)
- 物件図面: 配置図・公図・道路判定(役所照会)・私道所有者一覧。
- 要請内容の明文化: 通行と掘削の範囲、車種、時間帯、工事想定。
- 安全対策案: 舗装復旧・工事監督体制・近隣連絡フロー。
- 費用案: 承諾料の提示、負担内訳(印紙代・復旧費・測量費)。
- 相手のメリットを具体化する言い方
- 安心: 「期間・範囲・責任の限度を明記。事故時の保険付保。」
- 資産価値: 「道路の維持管理計画を共有。舗装補修費の一部負担。」
- 近隣関係: 「騒音・通行マナーのルール化。連絡先の一本化。」
- 承諾料の相場イメージ(地域・条件で幅あり)
- スポット掘削: 数万円〜数十万円(工事規模次第)。
- 通行+掘削の包括承諾(期間定めあり): 20万〜100万円超の事例も。
- ヒント: 「復旧を完全実施+工事負担明記」で承諾料を抑えられることがある。
- 書面の必須項目(チェックリスト)
- 当事者の特定: 住所・氏名・押印(実印推奨)
- 目的と範囲: 通行の対象者・車両、掘削の位置・幅・深さ、工事時間
- 期間・更新: 開始日・終了日・自動更新の有無、承継条項(将来の所有者にも効力)
- 費用負担: 承諾料、原状回復、第三者賠償保険
- 解除・違反: 違反時の是正手続、損害賠償の上限、通知方法
- 紛争解決: 管轄、調停・仲裁の選択肢
- 文言例(抜粋)
- 目的条項:
「甲(私道所有者)は、乙(申請者)に対し、乙所有建物の利用および維持管理のための通行を許諾する。」 - 掘削条項:
「乙は、上下水道・ガスその他ライフラインの敷設・修繕に必要な範囲で、道路表層の掘削を行うことができる。」 - 原状回復:
「乙は、工事完了後直ちに原状回復を行い、舗装の品質は事前合意の仕様に適合させる。」 - 承継:
「本承諾は、乙の譲受人および承継人に対しても同一条件で効力を有する。」
- 目的条項:
- 注意点(落とし穴)
- 口頭・メールのみはNG: 金融機関・買主の審査に通らない可能性。
- 承諾者の同意不足: 私道の共有者が複数なら「全員の承諾」が必要なことが多い。
- 期間の短さ: 短期承諾は売却後のローン審査で不利。可能なら期間は長め&承継条項を。
- 地役権の設定: 長期安定を重視するなら、通行地役権の設定(登記)も選択肢。ただし費用・手続が重くなる。
参考: 通行・掘削承諾の文例・実務解説
- 宅地建物取引業の開示実務(全日本不動産協会): https://www.zennichi.or.jp/
- 司法書士会の地役権・私道承諾の一般解説: https://www.shiho-shoshi.or.jp/
承諾が得られない場合の代替策(法的手段・売却戦略)
「どうしてもNO」なら、ルートを変える。交渉以外のカードを出す。
- 法的な手当(可能性のドアをノックする)
- 囲繞地通行権(民法): 公道に出るために他人地を通行できる権利。要件は厳格で、必要性・経路の相当性・負担に応じた償金が論点。
- 裁判所の調整(仮処分・訴訟): 緊急の通行・ライフラインの修繕で必要性が高い場合、司法的救済が図られるケースもある。
- 実務の壁: 時間と費用、近隣関係の悪化リスク。売却を急ぐなら現実的でないことが多い。
- 売却戦略をスイッチ
- 開示戦略: 「承諾なし・再建築不可の可能性・囲繞地検討中」など、誠実に開示し価格・引渡条件で調整。
- 用途特化の買い手: 賃貸投資・駐車場・資材置き場・再開発見込み等、建築ニーズが低い層へリーチ。
- 訳あり専門の買取: 承諾取得の難所を買い手が引き受けるモデル。短期現金化・瑕疵責任の簡素化が狙える。
- コスト・スピード・関係性の比較表
| 選択肢 | 成功可能性 | コスト負担 | スピード | 近隣関係悪化リスク | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 交渉継続(承諾取得) | 高〜中 | 中 | 中 | 低〜中 | 価格を維持したい |
| 法的手段(囲繞地等) | 中〜低 | 高 | 低 | 高 | 権利を確定したい |
| 仲介売却(開示調整) | 中 | 低〜中 | 中 | 低 | 相場近い売却を狙う |
| 訳あり買取(専門業者) | 高 | 低 | 高 | 低 | 早期現金化したい |
外部参考: 囲繞地通行権の基本解説(法務省・裁判所の公開情報が有用)
- 法務省 民法解説: https://www.moj.go.jp/
- 裁判所 判例検索: https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/
実際の売却成功事例(不安をどう解消したか)
ケース1:承諾料の見える化とメリット設計で合意に到達
- 状況: 私道共有者5名、うち1名が強硬に反対。再建築可否は道路種別上OKだが掘削承諾が未取得。
- 戦略:
- 可視化: 工事計画書・復旧仕様・保険付保を提示。
- メリット設計: 舗装補修を全体に実施(近隣も恩恵)+承諾料を均等配分。
- 合意形成: 反対者の通行時間帯懸念に配慮し、工事時間を9–17時に限定。
- 結果: 全員合意の承諾書を取得。仲介で相場−5%程度で売却。
- 学び: 「安心材料のパッケージ化」は最も効く。承諾料だけでなく、補修と保険が鍵。
ケース2:法的手段の検討から専門買取へ切り替え、2週間で現金化
- 状況: 私道所有者と連絡困難+過去のトラブル履歴。囲繞地の可能性はあるが時間がかかる見込み。
- 戦略:
- 試算: 法的手段の費用・期間・成功確率を見積もり、売却機会損失と比較。
- スイッチ: 訳あり不動産の専門買取へ。承諾取得は買い手側が引き受ける条件。
- 結果: 査定〜契約〜決済まで約2週間。価格は相場−15%程度だが、維持費と時間を考慮するとトータルでは合理的。
- 学び: 「早さ・確実さ」を優先するなら、専門買取は有効なセーフティネット。
参考(訳あり物件の買取実務の一般情報)
- 不動産テック系メディアの訳あり事例特集: https://www.re-port.net/
- 住宅金融支援機構の担保評価と再建築可否の考え方: https://www.jhf.go.jp/
使えるテンプレ・チェックリスト・Q&A
承諾交渉のためのチェックリスト
- 目的の明確化:
- 通行(人・車両)/ 掘削(上下水・ガス・通信)/ 工事期間
- 関係者の把握:
- 私道所有者の氏名と持分、連絡手段、共有者の人数
- 安心材料:
- 原状回復仕様、保険付保、工事計画、近隣説明文書
- 費用と条件:
- 承諾料の目安、復旧費負担、印紙代、測量・境界の扱い
- 書面の体裁:
- 実印・印鑑証明、登記の要否(地役権検討)、承継条項
よくある質問(ユーザーの検索意図に沿って回答)
- Q: 承諾書はどのタイミングで必要?
- A: 売却活動開始時から「取得見込み」を示すのが理想。ローン審査や重要事項説明では「原本提示」が求められることが多い。
- Q: 承諾料は誰が払う?売主・買主どっち?
- A: 慣行は地域・案件次第。売主が取得して価格に反映するか、買主が取得条件で値引きするかの2パターン。交渉の柔軟性が重要。
- Q: 承諾が1人だけどうしても取れない…
- A: 全員合意が前提の共有私道なら難所。代替案として地役権設定(過半同意の可能性検討)や、用途転換・専門買取の検討を。
- Q: 再建築不可だと値段はどのくらい下がる?
- A: 立地次第だが、相場の−20〜40%のレンジが目安とされることが多い。賃貸投資需要が強いエリアでは下げ幅が縮むことも。
- Q: 仲介より買取の方が良いのはどんなとき?
- A: 承諾が困難・時間がない・瑕疵責任を軽くしたい・近隣関係の悪化を避けたいとき。価格は下がるが、スピードと確実性が得られる。
図解で理解する通行承諾の「詰まるポイント」
図1:通行承諾の必要性マップ(イメージ)
- 接道判定:
- 公道 → 通行承諾不要(掘削は行政手続)
- 私道(建基法上の道路) → 通行は慣行ありでも書面化推奨/掘削は承諾要
- 私道(建基法外) → 通行・掘削とも個別承諾が原則
- 工事の深さと範囲:
- 表層補修 → 承諾簡易 / 低コスト
- ライフライン敷設 → 承諾厳格 / 中〜高コスト
- 再建築伴う工事 → 承諾+地役権検討 / 高コスト
この記事内の図は概念図です。具体の可否は自治体の道路判定・建築指導課の見解を確認してください。
表1:承諾がある場合/ない場合の売却戦略
| 状態 | ローン利用 | 価格影響 | 想定期間 | 主なリスク | 有効な一手 |
|---|---|---|---|---|---|
| 通行・掘削承諾あり | 通りやすい | 小 | 短〜中 | 追加工事承諾の更新 | 承継条項を明記 |
| 通行のみ承諾あり | 物件次第 | 中 | 中 | ライフライン不安 | 掘削承諾の追加取得 |
| 承諾なし(再建築可) | 厳しい | 中〜大 | 中 | 掘削不可・ローン審査 | 交渉・地役権設定 |
| 承諾なし(再建築不可) | 難しい | 大 | 短(買取)〜長(仲介) | 需要の限定 | 訳あり専門買取 |
外部リンク・参考情報(実務確認に役立つ)
- 国土交通省 住宅・建築関連情報: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/
- 自治体 建築指導課(道路判定・接道相談)例: 千葉市 建築指導課 https://www.city.chiba.jp/
- 司法書士会(地役権・私道承諾の基礎): https://www.shiho-shoshi.or.jp/
- 不動産関連ニュース・実務(RE-PORT): https://www.re-port.net/
- 住宅金融支援機構(担保評価の考え方): https://www.jhf.go.jp/
重要: 上記は一般的な参考。最終判断は、自治体の窓口・専門家(弁護士・司法書士・不動産会社)に直接確認してください。
結論:不安は「条件づくり」で解ける。出口は複数ある。
- 直球の結論: 私道持分なしでも、通行・掘削承諾を「見える化」して書面化できれば、売却は十分可能です。承諾が難しいときは、法的手段を検討しつつ、戦略を仲介から専門買取へ切り替える選択肢を持つことで、時間・費用・近隣関係のバランスを取れます。
- 次のアクション:
- 役所照会: 道路判定・接道確認
- 関係者マップ: 私道所有者の把握と連絡手段の確立
- 安心材料の用意: 工事計画・保険・原状回復案
- 交渉開始・書面化: 承諾書の取得/地役権の検討
- プランB: 期間を決めて、専門買取の査定も並行取得
情報提供としての選択肢: 訳あり物件の専門店【ラクウル】は、再建築不可や私道持分なしなどの難案件に慣れているため、短期の現金化や承諾取得のハードルを買い手側が引き受ける形で進められる場合があります。急ぎの資金化や近隣関係の摩擦を避けたい方は、比較材料として査定を取り、仲介案と並べて意思決定するのがおすすめです。
付録:実務フローのひな形(保存版)
ステップ別フロー
- 現状診断
- 接道確認: 役所で道路判定
- 私道把握: 所有者・持分・共有者数
- 工事要否: ライフラインの現況/再建築予定の有無
- 交渉準備
- 資料: 図面・工事計画・保険証券案
- 費用案: 承諾料レンジ・復旧費見積
- 文案: 承諾書テンプレ・説明資料
- 交渉・合意形成
- 接触: 書面・面談・近隣説明会
- 調整: 期間・範囲・承継条項の詰め
- 署名: 実印・印鑑証明の取得
- 売却実務
- 開示: 重要事項説明への反映
- 審査: ローン事前審査・銀行対応
- 引渡: 原本引き渡し・地役権登記(選択)
- プランBの発動(期限管理)
- 期限: 交渉に2〜4週間のマイルストーン
- 切替: 訳あり専門買取の相見積もり
- 意思決定: 価格・期間・関係性の総合評価
承諾書テンプレ(骨子抜粋)
- 件名: 私道通行・掘削承諾書
- 甲: 私道所有者(住所・氏名・押印)
- 乙: 申請者(住所・氏名・押印)
- 目的: 乙所有物件の利用・維持管理のための通行およびライフライン工事の掘削
- 範囲: 通行(人・車両)、掘削(位置・幅・深さ・期間)
- 期間: ○年○月○日〜○年○月○日(自動更新あり/なし)
- 費用負担: 承諾料、原状回復、保険、印紙代
- 承継: 乙の譲受人・承継人にも効力を有する
- 紛争解決: 管轄裁判所/調停
使い方: この骨子を基に、実務書式(司法書士・弁護士の監修)に当てはめてください。
あなたの不安は、情報が整うほど小さくなります。いま、できる一歩は「相手の不安も同時に減らす準備」です。その準備ができたら、交渉は前に進みます。焦らず、でも止まらず。必要なら、専門買取も「逃げ」ではなく「賢い選択」です。


コメント